脂質異常症(コレステロールと中性脂肪)
Q.
どんな病気?
A.
脂質異常症とは、血液中の脂質(脂肪)の濃度が異常に高い状態を指し、心筋梗塞や脳卒中などの、その後の人生に深刻な影響を与えうる動脈硬化性心血管系疾患のリスクを高める可能性がある病気です。
Q.
どんな症状が出るの?
A.
上記のような深刻な健康問題を引き起こすまで自覚症状がないことが多く、発見には血液検査が不可欠です。だからこそ、健康診断によるスクリーニングや定期的な血液検査によるチェックが重要になります。
なお、場合によっては、以下のような症状が現れます。
・黄色腫:皮膚の下に黄色っぽい脂肪が沈着するもので、肘や膝、目の周囲(まぶたなど)にできることが多いです。
・角膜輪(かくまくりん):目の角膜の周囲にできる灰色または白色の輪で、家族性高コレステロール血症の若い患者さんに多くみられます。
Q.
どうなったら診断されるの?
A.
日本動脈硬化学会は、以下の血中脂質値に基づいて脂質異常症を定義しています。
・LDL-C(悪玉コレステロール):140mg/dL以上
・HDL-C(善玉コレステロール):40mg/dL未満
・中性脂肪(TG):150mg/dL(空腹時)以上または175mg/dL(非空腹時)以上
・非HDL-C(総コレステロール-善玉コレステロール):170mg/dL以上
Q.
どうなったら治療が必要になるの?
A.
治療開始の基準や治療の目標は、患者さんのリスクレベルによって異なります。リスクレベルは、久山町リスクスコア(年齢、性別、血圧、脂質値、喫煙、糖尿病などの因子に基づいて、冠動脈疾患発症のリスクを推定するものです。日本動脈硬化学会は、このスコアを個人別のリスク評価で使用することを推奨しています。)で算出します。
①LDL-C
原則として、LDL-Cは低ければ低いほど良いことが分かっています。
・一次予防(まだ動脈硬化性心血管系疾患になっていない方)
低リスク群: LDL-C:160 mg/dL未満
中リスク群: LDL-C:140 mg/dL未満
高リスク群: LDL-C:120 mg/dL未満(糖尿病合併症、喫煙などがあると100mg/dL未満)
・二次予防(すでに動脈硬化性心血管系疾患になったことがある方)
LDL-C:100 mg/dL未満(心筋梗塞や糖尿病などがあると70 mg/dL未満)
②中性脂肪
中性脂肪値によって治療方針が異なります。
・中性脂肪:500mg/dL以上
膵炎を予防するため、直ちに介入することが推奨されます。
生活習慣:食生活の改善、運動量の増加、アルコール摂取量の減少を行います。
薬物療法:中性脂肪値を低下させるためにフィブラートまたはオメガ3脂肪酸の投薬を考えます。
・中性脂肪:200~499mg/dL
久山町スコアなどのツールを用いて心血管リスクを総合的に評価します。
生活習慣:食事療法、運動療法、体重管理を行います。
薬物療法:3~6ヵ月後に生活習慣の改善が不十分な場合、患者さんにさらなる危険因子(糖尿病や高血圧など)がある場合に考慮します。
・中性脂肪:150-199 mg/dL
生活習慣:食事療法、運動療法などを考慮します。定期的に中性脂肪値を測定するようにおすすめします。
薬物療法:他の脂質異常や危険因子が存在しない限り、通常は開始しません。
Q.
どんな治療があるの?
A.
生活習慣の改善と薬物療法があります。
まずは生活習慣の改善を試みていただきます。生活習慣の改善だけでは十分でない場合、薬物療法を選択します。
①生活習慣
・食事:魚、大豆、海藻、野菜を中心とした日本食が推奨されます。一方で、塩分と脂肪の摂取は控えましょう。
・運動:30分以上の有酸素運動を週3-4日行うのが良いとされています。
・喫煙:禁煙と副流煙を避けることが推奨されます。
②薬物療法
・スタチン:LDL-Cを低下させます。LDL高値の患者さんに対する第一選択薬です。しかし、数%で横紋筋融解(筋肉の痛みや重ダルい感じが生じます)などの副作用が見られます。
・エゼチミブ:LDL-Cを低下させます。スタチン不耐(副作用などによりスタチン内服継続できない方)の場合などに用います。
・PCSK9阻害薬:重症の家族性高コレステロール血症患者さんなどに用います。当院で使用することはありません。
・フィブラート系薬剤:中性脂肪を低下させます。
・オメガ3脂肪酸製剤:中性脂肪を低下させます。